レーダー照射問題に見る安倍外交の凄さ

3月4日の国会質問(予算委員会)では、参議院自民党を代表し、与党最初の質問に立たせて頂きました。野党の質問が大幅に延長されたため、告知より遅れての開始となりましたが、約1時間半の質疑に向けて告知情報のシェアなどご協力下さった方々、視聴下さり、質問後コメントをお寄せ下さいました全国各地の皆様に、心をこめて御礼申し上げます。

賜りました数百のコメント全てに目を通し、新聞やテレビ報道、動画サイトの傾向を分析すると、新たな発見があり、とても勉強になります。全国の視聴者の皆様が最も強い関心を示して下さったのは、やはり「韓国によるレーダー照射問題」を主とする日韓関係の質疑でした。

どなたかがYouTubeに掲示して下さった私の国会質疑の動画は、この2日間で再生回数が11万回を超えています。この問答は全国紙の報道に加え、韓国紙「中央日報」にも即日詳細に報じられました。やはり日本国内のみならず、韓国も静かに注視している問題なのですね。

質問のロジックを構築する上で私が意識したのは、

●日韓の感情的な応酬ではなく、レーダー照射で何が起こっていたのか、国民皆様の前で真実を明らかにし、その過程を克明に議事録に残すこと。
●レーダー照射は、海洋の安全や平和構築を進める国際協調の努力に背く、極めて危険な挑発行為であることから、韓国自身の国際的信用や国益をも減じる蛮行だと気付いてもらう材料を提供すること。
●国益より(反日の)国民感情を優先し、「日韓関係が悪化しても構わない」と言わんばかりの言動が続く韓国政府と、(韓国に不信感を強める)国民感情を背負いながらも国益を考慮して、「これ以上日韓関係を悪化させまい」と抑制的に事に当たる日本政府を対比し、国家経営にあたる両国トップリーダーの視野の違いを引き出すこと。
●日本の海上自衛隊と韓国海軍のどちらが、国家や国民に対して忠実な任務を遂行したのか、その錬度を検証し、両国の国民世論にその評価を委ねること。
●レーダー照射問題を日韓二国間の問題として捉えるだけでなく、各国の安全保障のプロが注視する国際的な側面を共有すること。
●在韓米軍の地政学的重要性、日米韓が連携して実現するアジア安定のメリットを訴えること。

両国の主張が真っ向から対立し続けたこのレーダー照射事案は既に、日韓のどちらかが「白」であり、残りが「黒」となってしまう、のっぴきならない外交構図になっていました。舌を巻いたのは、安倍総理の答弁です。

日韓関係や両国の国民感情をこれ以上悪化させるべきではないという明確な政治判断があるのでしょう。「決定打」を避け「寸止め」とする「武士の情け」があるのかもしれません。

どちらが虚偽を重ねたかという批判の主張を全くせず、総理は答弁に立たれました。

「我々は真実を言っており、真実を言う方が強い。各国海軍はプロフェッショナルとして連帯意識を持っており、安全保障の各国のプロ達は、真実が何かをみんな知っている。自衛隊は信頼を上げた」…

韓国についての批判を一切語ることなく、この一言で決着あり(実は「各国のプロは知っている」のではなく、「各国のプロに伝えてある」という外交の手は周到に全て打ってある、という証左、国内外への宣言でもある)。

国力に見合った外交とはこのことであり、ただならぬ想いを胸に秘めながらも、淡々と語られた安倍外交の戦略性と錬度に、正直、敬服しました。

「国際紛争を解決する手段として戦争を選ばない」と高らかに宣言している日本であればこそ、国民の安全と国の名誉をかけた外交は「知の格闘の主戦場」であり、誠実で信用力のある外交、国際世論の多数派工作は穏やかな国民生活を守る「武器」であります。

安倍総理の「凄み」を感じた瞬間でした。